原題 : Sink The Bismarck ! (戦艦ビスマルクを撃沈せよ)
原作 : Cecil S. Forester, The Last Nine Days Of The Bismarck (ビスマルク最後の9日間)ならびに連合王国海軍省艦隊司令部資料
見どころとテーマ
1930年代末、深刻な経済危機が持続する状況のなか、世界市場の軍事的再分割競争を繰り広げる列強諸国家による軍備増強・兵器開発競争の果てに始まった第2次世界戦争。
そこでは、「局部的合理性」を追求するあまり、戦略的かつ戦術的に見て「とんでもない」スーパー兵器がいくつも登場した。ドイツ帝国海軍の戦艦ビスマルクもその1つ。
この映画は、ほとんど実戦経験を経ないうちに大西洋に沈んだ超弩級戦艦ビスマルクの運命を描いた作品。ブリテン海軍の立場から、対戦艦ビスマルク作戦を描いている。
戦役投入後の最初の作戦であえなく海の藻屑となった、この戦艦の数奇にして皮肉な運命を追いかける。
第2次世界戦争中、北海から大西洋北西部にかけて展開されたブリテンおよびドイツの両帝国海軍のメンツ争いが、この映画に描かれている。
海戦史上、この海戦では、とくにドイツ側の戦略と戦術にいくつも大きな疑問(初歩的な欠陥)があるという。
この疑問も含めて、この海戦の経緯と結果を、ブリテン海軍の視点から描いたのが、この作品。これまた、歴史記録にこだわるブリティッシュ・スタイルに脱帽する。
1939年に盛大な進水式で登場した超弩級戦艦ビスマルク。しかし、建艦の戦略的目的はいい加減で、ただ単にドイツ帝国海軍の見栄や威信のために生まれたようなものだった。
ヒトラーとドイツ海軍本部はビスマルクを温存して実戦に投入しようとはしなかった。そして「ライン演習作戦」でかなり中途半端な戦略的位置づけ(というよりも、そもそも戦略の欠如で)ビスマルクをバルト海から北海・大西洋に送り出した。
巨大戦艦ビスマルク建造・就役の情報は、諜報組織をつうじてブリテン海軍によっていち早く伝えられていた。
世界貿易・金融を組織化する中心権力として世界経済を支配するブリテンにとって、その通商網の破壊をめざす巨大戦艦の就航はきわめて危険な脅威となった。とはいえ、ブリテン海軍は戦艦ビスマルクとドイツ海軍の力を過大評価していた。
時代遅れの大艦巨砲主義にとらわれていたのはブリテン海軍も同様で、ブリテン帝国の威信にかけてビスマルクを捕捉・撃破しようとしていた。海軍司令部は、シェパード大佐を作戦本部長に抜擢して対ビスマルク作戦を展開した。
5月24日、ビスマルクを補足したブリテン艦隊はデンマーク海峡で闘いを挑んだが、見かけ倒しで防御性能や攻撃性能に劣るブリテン艦隊は返り討ちにあってしまった。戦艦フッドがあえなく撃沈された。
チャーチルとブリテン艦隊にとって、フッド撃沈は大きな政治的・イデオロギー的打撃(外観イメイジの打撃)となった。ブリテン海軍は大西洋ならびに地中海全域における艦隊編成の戦略を組み換えて、北大西洋に艦隊を振り向けてビスマルクの索敵・掃討にあたらせた。
海戦の帰趨は半ば以上に偶然に支配されていた。が、索敵活動に航空機動力を投入したブリテンに「勝利の女神」はほほ笑んだようだ。
3日後、ブリテン艦隊はビスマルクを発見して攻撃、ビスマルクの航行能力に大きな打撃を加え、その後、さらに追撃して撃沈した。
巨艦ビスマルクは、総じて大した攻撃力を発揮することもなく大西洋に没した。それは、海戦における大艦巨砲主義の終焉を明示するものだった。
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