1974年作品。ドイツ連邦共和国では1970年代まで、冷戦構造のもとで、左翼への対抗上いわば必要悪として「お目こぼし」されながら、旧ナチスの残党が政府組織や財界などに巣食っていたといわれている。彼らは旧ナチスメンバーの「互助会組織」を国際的につくり上げていたようだ。この物語は、そういう時代状況を背景に置いている。
原題は The Odessa File で、「オデッサ」という秘密結社の名簿ファイルを意味する。原作は Fredelick Forsyth, The Odessa File, 1972 。
フレデリック・フォーサイスのドキュメント・フィクション――事実にもとづいて背景や事件を描いた小説――が原作となっている映画作品は、このブログで今までに2つ取り上げている。「ジャッカルの日」と「戦争の犬たち」だ。
原作はいずれも、現代世界の状況を取材・調査・分析した結果を基礎にして、現実を読み解き、描き出すために、小説=フィクションの手法を使っている。だから、内容は現代世界の記録(ドキュメンタリー)である。
フォーサイスは、多数の人びとの関心を集め、感動を与え、問題提起をするために、普通のルポルタージュや論文ではなく、小説という手法を選択しているのだ。事件が展開している現実や歴史について、問題提起し、問題意識を喚起するために。
この映画「オデッサ・ファイル」の原作も、また同じ発想と手法によっている。
原作者は、小説の巻頭辞で、この物語は実在の事件にもとづいて作られたと述べている。
組織・団体、人物、できごとなどは、物語のなかで固有名詞は変えられているが、背景や歴史的文脈、事件の構図は実在のものであり、実際の社会状況を正確に反映している。
たとえば、ドイツの憲法擁護庁――この場合の憲法 Verfassung とは統治体制とか支配秩序という意味の方が正確だろう――はその発足当初からナチス残党を含む右翼との結びつきが指摘されていた。そのため、左翼への監視や抑圧が厳しい割に極右への対策が甘い、というよりも極右を温存しているという批判が今もって絶えない。
1960年代のドイツ連邦共和国。まだ多くのナチス党の残党が生き残っていた。東西冷戦のもとで、東西双方の側がレジームの強化のために、ナチスの息のかかった科学者や専門家、残党を利用していた。ゆえに、ナチズムの亡霊が甦る危険性を育む素地・温床がいたるところに残っていた。秘密結社「オデッサ」は、西ドイツの政財官界で旧ナチス党メンバーの影響力を拡大することを狙う団体だった。オデッサは、過去の責任を追及されようとしているメンバーの逃亡を支援していた。
フリージャーナリストのペーター・ミーュラー――英語版ではピーター・ミラー――は、あるきっかけから旧ナチスの残党組織の実態をつかもうと取材旅行をすることになった。そのさい、ナチスの幹部だった人物が、財界の要人ロシュマンとして暗躍していることをつかんだ。
ロシュマンの追及をやめないペーターは、オデッサから命を狙われるようになった。それでも、調査を続けた。彼はオデッサの実体をつかむために、ヴィーゼンタールの事務所を訪れた。ヴィーゼンタールによれば、オデッサは、戦争犯罪人として追及をうける恐れのあるナチスの残党を国外に逃がしたり、国内で生活できるようにに偽の身分を与えたりする組織で、国際的なネットワークを組織している秘密結社だった。
ペーターは、イスラエルの諜報機関の占有捜査に協力した結果、ついにロシュマンの館に潜入、直接対決に持ち込んだ。ロシュマンの過去を問い詰め暴き出した。ここで、ペーターの執拗な追及の理由が明らかになった。単なる正義感だけではなく、個人的な復讐心がペーターを命がけの探索に駆り立てていたのだ・・・。
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