のだめ原作漫画… 目次
原作漫画…残された謎
映像で「はしょられた」部分
音楽祭 三木清良…
カイ・ドゥーンの役回り
真一とヴィエラの師弟関係
瀬川悠人はなぜ脅える
「のだめ」の人物像と心理
「のだめ」vs.千秋真一
音楽家の目標って?
真一と三善家との関係
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映像で「はしょられた」部分

  私は、最初にドラマを観たとき、原作については目を通していないものの、物語の展開上いくつか省略されたエピソードがあると強く感じた。
  これらは、一言で言えば、物語が当然想定しているはずのスケイルや奥行き、状況設定などが出てこないということだった。実際に実写映像ドラマ化が可能な範囲とのギャップということになるが。
  放送時間枠やら予算枠、実写による背景・状況設定の困難さなど、映像化には大きな限界や制約がのしかかってくるのだ。
  けれども、物語の全体やテーマを理解するためには、原作との照合比較がどうしても必要になる――どうでもいいことなのだが。
  以下では順不同で、物語の理解のために必要だが「はしょられた部分」を手当たりしだい思いつくまま、取り上げていく。

■音楽祭 三木清良との出会い■

  ドラマでは三木清良は、オーストリア留学から一時帰国して桃が丘音楽大学の学生となっているが、原作では、長野のニナ・ルッツ音楽祭で、千秋真一や「のだめ」ら桃が丘音大生と出会うことになる。
  何でこれが気になっていたかというと、物語の状況設定が《日本の大学音楽教育全体》をカヴァーするようなスケイルなのに対して、ドラマではひとつの音大の内部で自己完結するような筋立て、人物設定になっているということが「?」だったからだ。


  さて、桃が丘音大のメンバーは、シュトレーゼマンの特別推薦で長野県での音楽祭に参加できることになった。千秋はマエストロの弟子だから、エリーゼの命令でマエストロ――変人のスケベジジイ――が引き起こすであろうトラブル処理係として随行した。
  エリート学生選抜オーケストラの指揮=指導をするはずのシュトレーゼマンが、これまたご乱行(飲みすぎ)の結果体調を崩したので、千秋が急遽、代行=副指揮者としてオケをコンダクトして、その圧倒的な才能と訓練の暑さを披瀝することになった。課題曲はドゥヴォルジャークの交響曲第5番というマニアックなものだったが、師匠が振る楽曲だということで、千秋はこの楽曲について深く研究し、楽想やオケの指揮のスタイルまで入念に準備していた。
  そこで、日本の学生音楽エリートのあいだに「千秋真一」の声価を浸透させた。清良もまたしかりだった。さらにこの音楽祭に客演・指導にあたっていたヨーロッパの名だたる音楽家にも千秋の実力が印象づけられた。
  月刊のクラシック音楽雑誌の編集記者、河野けえ子が千秋に着目したのもこの音楽祭だった。

  もちろん、実写ドラマでは、制作では「できるだけ上演場面を限定せよ」という原則があるから、この音楽祭の場面を割愛するのは仕方がない。ドラマの質を落とすという性質の「?」ではない。
  話題が日本のエリート音大生全体ということになれば、描くべき背景や状況の設定が大きくなりすぎて、むしろ物語のまとまりが失われるから、適切な脚色化というべきだ。
  それにしても、原作を読んでみて、やはり全国的スケイルでの物語の主な登場人物たちの邂逅(出会い)や絡み合い、ぶつかり合いの場が大学外にがあったのだ、と納得した。

  原作マンガのストーリー構成と状況設定は、かなりしっかりしている。こういう音楽祭での顛末や出会いを描いている。物語のスケイルから見て適切な状況設定にしてある。
  マンガは、実写映像に比べると、まだずっと抽象度が高いから、それゆえ読者の想像力(の豊富さ)に依存する度合いが大きい。鉛筆や筆があれば、描写力や取材力=知識があれば、だいたい描ける。もちろん、作者つまり漫画家の構想力や筆力の高さ――加えて作者の知識や取材力、協力者の厚み――が要求されるのだが。
  だが、映像では難しい。たとえばこの音楽祭の場所=ロケイション、登場人物、背景・小道具をすべて準備してそれらしい映像を拵えないと視覚的なリアリティないし存在感(訴求力)が失われてしまうから。

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