ショーシャンクの空に 目次
原題と原作について
見どころ
あらすじ
冤罪で終身刑
ショーシャンク刑務所
暴君所長とその取り巻き
エリス・レッド
専門知識を見込まれる
ポスターとチェスの駒
図書係の仕事
信頼と友情の絆
ブルックス老人の死
図書施設の承認
空に響く美しい歌声
「営利事業」となった刑務所
「真犯人」の情報
脱  出
翌朝、刑務所では
脱獄と痛烈なしっぺ返し
レッド、アンディを偲ぶ
レッドの出獄

エリス・レッド

さて、アンディはその朝の食事でエリス・レッドのグループと知り合いになった。レッドはやはり殺人罪で終身刑を宣告され、この刑務所ですでに20年近い年月を送っていた。ほかの囚人たちが座かを問われると「自分は無罪だ、冤罪でここに来た」と答えるのに対して、レッドは自分の殺人罪を明白に認めていた。「愚かだった」と。そして、これまでに何度も仮釈放を要求していたが、そのつど却下されていた。
  アンディがレッドと親しくなるにつれて、レッドが刑務所の仲間たちにタバコや雑誌、ポスターなどの「禁制品」を外部から蜜輸入して、何がしかの報酬・代価と引き換えに供給する「サプライヤー」となっていることを知った。塀の外の世界との「貿易業者」だった。

  高学歴のエリートで資産家だったアンディは、刑務所のなかではきわめて特異な存在だった。自分を誇示することも、虚勢を張ることも、畏怖する様子もなく、穏やかに「自分というもの」を保持し続けていた。彼の知性は言葉田行動の端々に現れ出た。その知識や知性に対して、レッドは深い敬意を抱いた。アンディも、物静かで観察眼にすぐれたレッドに一目も二目も置くようになる。2人の信頼関係が築かれていった。
  そんなある日、アンディはレッドに物資の調達を頼んだ。ロックハンマーとチェスの駒を彫琢する材料として石(岩のかけら)がほしい、と。
  アンディの趣味は岩石の蒐集だった。地質学や鉱物について、アンディは広く深い知識を持っていた。   ところで、刑務所内でのアンディの職場=持ち場は、洗濯場(ローンダリー)で、衣服などの収集、洗濯機への投入、乾燥、アイロンがけなどの作業を受け持たされた。
  作業をしているある日、あのボッグズに率いられた悪辣グループ「シスターズ」が作業場にやって来て、アンディを威嚇し、暴行し、レイプした。しかし、アンディは苦痛に耐えて、屈服せずに、その事件は誰にも語らなかった。

専門知識を見込まれる

強い陽射しが照りつける初夏のある日、アンディはレッドやヘイウッドたちともに、刑務所の屋上でタール塗装の作業をしていた。屋根の防水性を回復して、雨漏りを防ぐためだ。
  そのとき、アンディの耳に、刑務長ハドリーの「ぼやき」の声が入ってきた。長らく音信が絶えていた兄が最近なくなったという。その兄は資産家で身寄りがないことから、ハドリーが遺産を相続できることになった。だが、州の税法では高い相続税を課されるため、手許に残る資産はわずかなものになり、しかも所有権の移転登記にかなりの手数料が取られてしまう、というのだ。
  銀行家だった頃、相続などの手続きにともなう資産の保護や課税回避(節税)は、アンディが得意の専門分野だった。で、レッドやヘイウッドがハドリーに近づくのは危険だと引き止めるのを振り切って、アンディは好奇心に引かれて、ハドリーに質問した。
「あなたの奥さんは信用できますか。信頼関係がありますか」

  夫婦仲を揶揄しようというのかと、ハドリーはいきり立ち、アンディのむなぐらをつかんで、屋上の縁まで追い詰めた。
  だが、アンディが「奥さんに全部贈与する形にすれば、税金はすごく軽くなりますよ。所有権移転の登記手続きは私がやってあげますよ・・・」という声を聞いて、乱暴をやめた。刑務長は、アンディが節税の方法を助言していることに気づいた。
  アンディは、「それについては報酬はいらない。その代わり、今から屋上で作業するみんなにビールを飲ませてくれればいい」と言った。

  こうして、受刑者仲間は初夏の風に吹かれながら、屋上で小瓶ビールを飲むことができた。通常、刑務所では禁制のビールを、しかも受刑者苛めで高名な刑務長みずからのおごりで。アンディ自身は、何の見返りも求めなかった。ただ、仲間の喜ぶ顔を見たかったのだ。
  目立たないように日陰に腰を下ろしているアンディに、ヘイウッドが小瓶ビールを勧めてくれた。
  いつもは、独り離れて孤高を保っているように見えるアンディは、じつは仲間を思いやる気持ちの持ち主だった。しかも、あの横柄なハドリーにかけ合って、ビールを手に入れてくれた。この日から、多くの受刑者たちのアンディを見る目が変わった。
 ハドリーは、アンディの助言にしたがって手続きをして、多額の資産を手に入れることができた。

 しばらくして、刑務所の娯楽、映写会が催された。多くの囚人たちが会場に詰めかけて、銀幕の美女とストーリーに惹きつけられていた。レッドも熱心にスクリーンに見入っていた。そこに、アンディがやって来て、レッドに、銀幕の美女スター、リタ・ヘイワースのポスターを調達してくれと頼み込んだ。
 ところが、アンディが映画会場から出たところに、ボッグズとシスターズが待ち構えていた。彼らは、アンディを映写室に追い込んで暴行を加えた。そのうえで、さらに屈辱を与えようとしたが、アンディは死を覚悟して拒否したため、さらに殴られて重傷を負ってしまった。彼は医務室に収容された。

 ボッグズは思うさまアンディを打ちのめして、意気揚々と監房に戻ってきた。監房に入ると、ハドリー刑務長が待ち受けていた。ボッグズは身を退こうとしたが、すぐうしろにも別の刑務官がいて、ボッグズの身動きを封じていた。
 ハドリーは帽子を脱ぐと、ボッグズに殴る蹴るのひどい暴行を加え始めた。ボッグズがいままで受刑者にふるってきた暴虐が、自分に返ってきた。それは、ハドリーのサディスティックな性格が突出した、容赦のない暴力だった。
 ひどい暴行を受けて、かろうじて命を捕りとめたものの、ボッグズは内臓破裂、頚椎骨折、脊椎破砕などで植物人間になってしまい、そのまま身体不随収容者専門の医療刑務所に送られていった。
 アンディには結果的に救いだった。が、所長と刑務長の息がかかった者にちょっかい出した者への報復と見せしめだった。暴力は暴力で報いられた。

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